1. 目の錯覚とは何か

私たちが見ている世界は、実は目で見たままの“現実”ではありません。脳は目から入った情報を瞬時に処理し、「解釈」して見せています。この解釈の過程で、周囲の色、形、大きさ、光の条件などに影響され、本当とは違う見え方をしてしまうことがあります。これが 目の錯覚(錯視、Optical Illusion)です。

錯覚は日常生活でもよく起こります。例えば、同じ色なのに明るさや背景によって違って見えたり、同じ大きさなのに形が違って見えたりします。これは脳が「効率よく」情報処理をするために、周囲の文脈を利用するからです。

2. なぜ人は錯覚にだまされるのか

脳はすべての情報を一つ一つ正確に処理しているわけではありません。

  • パターン認識:人は一文字ずつ読むのではなく、単語全体をまとめて認識します。
  • 相対的な判断:色や大きさは“単独”で認識されるのではなく、“周囲との比較”で判断されます。
  • 視覚の補完:足りない情報を過去の経験や予測で補います。

このような仕組みが、私たちを錯覚に導きます。

3. 代表的な目の錯覚とその原理

3.1. 同じ色なのに違って見える錯覚

二つのボックスの中央にあるピンク色は同じ色ですが、背景色の違いにより、片方は明るく、もう片方は暗く見えます。 これは、同時対比効果(Simultaneous Contrast)と呼ばれます。周囲の色が、中心の色の明るさや色味を変えて感じさせます。

中央の四角形は同じ色でしょうか?
中央の小さな四角形をドラッグして動かしてみてください。信じられないかもしれませんが、同じ色です。

3.2. 円の大きさ比較錯覚(エビングハウス錯視)

中央の丸い円は、片方が大きく、もう片方が小さく見えますが、実際は同じ大きさです。 これは、エビングハウス錯視と呼ばれます。周囲の円の大きさが、中央の円の大きさの知覚を変えてしまいます。

中央のまるい円は、どちらが大きいですか?画像をクリックしてください。

3.3. 動いて見える点の錯覚(Troxler効果)

交差している点を見続けると、その交差点が白く見えたり、他の点が消えて見えます。 これは、Troxler効果と呼ばれます。視線を一点に固定すると、周辺視野の刺激が脳で抑制され、見えなくなる現象です。

ドットを数えてみましょう。何が起きていますか?

交差している点の 1 つに焦点を合わせると、その交差しているを見ている間は白くなります。しかし、他の交差している点はどうでしょうか? つまり、目に見えるものを信用できないことがある、と言う事です。

3.4. 動いて見える点の錯覚(カフェウォール錯視)

斜めの色パターンの影響で、実際には平行な線が斜めに傾いて見えます。 これは、カフェウォール錯視と呼ばれます。高コントラストの色パターンと境界線が、視覚的な傾きを生み出します。

画像をクリックすると、四角の中の色が消えます。これらの線が平行だと解る様になりました。

3.5. 色覚検査型錯視

円の中に「6」や「2」の数字が隠れています。色覚に異常がある場合、数字が見えにくくなります。 これは、色覚の個人差と呼ばれます。特定の色の区別が困難な人は、色相差を利用した図形を認識できません。

1つ目の円には、「6」、2つ目の円には、「2」という数字が見えるはずです。そうでない場合は、色覚検査を受けることを検討してください。

3.6. 文字や形の補完錯覚

欠けた文字や形でも、脳が自動的に補完して正しい形として認識します。 これは、ゲシュタルトの法則と呼ばれます。人は部分的な情報から全体像を推測・補完します。

私たちの脳は、単語を一文字ずつ読むのではなく、単語全体を読解します。

4. カラーテクノロジーで錯覚を防ぐ方法

網膜の疲労、背景効果、照明、周りの環境は全て、私たちが色を知覚することに影響を与えます。特に製品開発や品質管理では、錯覚による判断ミスが大きな損失につながることがあります。これを防ぐために、カラーテクノロジーを活用し、主観を排除し、正確な評価を行う必要があります。

標準光源装置

標準光源装置は、店舗の照明だけでなく、昼光色、LED照明、電球色など、最終的な照明環境を想定でき、商品の色をシミュレーションすることができます。複数の素材を組み合わせて作った製品の場合、あらゆる照明条件下で各素材の色の調和を確認することができます。

  • 役割:昼光色、蛍光灯色、LED照明など、実際の使用環境を再現できます。
  • 効果:複数素材を組み合わせた製品でも、すべての素材の色調和を確認可能。
  • 例:店舗照明と屋外光で色が違って見える衣服や包装の色確認に活用。

分光測色計

人間の目は周囲の影響を受け、色を判断していますが、分光測色計ではその様な事はありません。分光測色計は、対象となるサンプルエリアからの反射光を測定するだけです。ターゲットマスクから見える対象物だけを測定しますので、周囲の影響を受けません。すなわち、装置は測定口から見たターゲットをそのまま観察します。

  • 役割:人間の目の主観を排除し、反射光を数値で測定します。
  • 効果:背景色や周囲の色の影響を受けず、サンプルそのものの色を正確に取得。
  • 例:印刷物のインキ濃度や色差の管理。

色覚検査

仕事で色を判断する必要がある場合は、色覚の検査をした方がよいでしょう。

  • 役割:色覚に個人差があるため、色判断が必要な仕事では定期的な検査が重要。
  • 方法:オンラインカラーゲームや、ファンズワース・マンセル100ヒューテストなどの公式テスト。

エックスライト社のカラーIQ(色彩感覚)テスト

真の色覚分析を行うには、Farnsworth-Munsell 100 Huetest(ファンズワース・マンセル 100 ヒューテスト)をお勧めします。

Farnsworth-Munsell 100 Huetestの製品詳細

5. よくある質問(FAQ)

Q1:目の錯覚を完全になくすことはできますか?
A1:完全に防ぐことはできませんが、標準化された光源や分光測色計を使用することで、色判断の誤差を大幅に減らせます。

Q2:なぜ人の目は簡単にだまされるのですか?
A2:脳が情報を効率よく処理するために、周囲との比較や過去の経験を使って解釈するからです。

Q3:カラーテクノロジーはどの業界で役立ちますか?
A3:印刷、パッケージ、繊維、塗装、自動車、家電、食品など、色品質が重要なあらゆる業界で利用されています。

Q4:分光測色計と色見本の違いは何ですか?
A4:色見本は目で比較しますが、分光測色計は光を数値化して比較します。より正確で客観的です。

もっと知りたい方へ

色を正確に見るための情報が必要な場合は、以下のブログを参考にしてください。

  1. 色彩感覚(パート1):光からの影響:人間はどのように色を知覚しているか、なぜそのことが製造業にとって、重要なのかについて、説明します。
  2. 視覚評価の科学:全ての色評価ワークフローに、なぜ標準光源装置が必要なのか、説明します。
  3. メタメリズムとは:ある照明条件下では色が一致するように見えますが、他の照明条件下では一致しなくなる現象について、説明します。

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色彩評価における、測色原理について、より深く知りたい方は、オンライン講座「色と見えの理論(FOCA)」にお申込みください。

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目の錯覚の対策におすすめの製品一覧

以下の製品を使用すれば、主観を排除し、正確な評価を行うことができます。

Ci64

ポータブル積分球分光測色計 Ci64

エックスライトの最も精密なポータブル積分球分光測色計 Ci64は、正反射光込み/除去の同時測定、相関光沢測定が可能で、UVオプション付きのモデルもあります。

 
SpectraLight QC

標準光源装置 SpectraLight QC

SpectraLight QCは、昼光やその他の照明条件(最大7光源)の下で、大小の物品の重要な目視評価を行えます。

 
Judgeled

標準光源装置 Judge LED

環境に優しい LED 標準光源装置「Judge LED」は 2 つのサイズをご用意し、瞬時に立ち上がるインスタントオン機能と一貫した光源を提供し、正確なカラー評価をサポートします。

 

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