色が見える仕組みとは?初心者のための徹底解説

Posted 30 January 2023 by X-Rite Color
Modified 10 September 2025

はじめに

私たちは日常生活の中で無意識に色を認識しています。赤いバラ、青い空、白い紙などです。 しかし、「なぜ色が見えるのか?」と聞かれると、明確に説明できる人は少ないかもしれません。色が見える仕組みは 光・物体・人間の視覚 という3つの要素が関わる現象です。
本記事では、この3つの要素を中心に、初心者でもわかるように色の見え方を解説します。印刷・デザイン・塗装など、「色が見える仕組み」を理解することは、色を扱う仕事をしている方にも役立つ内容です。

1. 色が見えるための3つの要素

色の見え方は、単独の要素で決まるわけではありません。 光源(照明)、物体、人間の目と脳 が相互に作用して初めて色が見えます。

1.1. 光(光源)

色の認識は光から始まります。光は電磁波の一種で、その中でも私たちの目に見える範囲(波長380〜780nm)を 可視光と呼びます。 光にはさまざまな波長が混ざっており、これが色の基礎になります。

  • 短波長(約400nm前後)→ 青や紫
  • 中波長(約500〜570nm)→ 緑
  • 長波長(約600〜700nm)→ 赤やオレンジ

光源によって放出される波長の分布が異なるため、同じ物体でも照明が変わると色が違って見える現象があります。これを**メタメリズム(条件等色)**と呼びます。 例えば、印刷物を蛍光灯下と太陽光下で比べると色味が変わるのは、光源のスペクトルが違うためです。

可視光スペクトルについて、詳細を知りたい方は以下のブログよりご参照ください。
可視光スペクトルとは?

1.2. 物体

物体自体には「色」があるわけではありません。物体の表面は光を 反射・吸収・透過します。私たちが目にしている色は、物体が反射した光の波長によって決まります。

  • 赤いリンゴ → 青や緑の波長は吸収し、赤の波長を反射
  • 白い紙 → 可視光全体をほぼ均等に反射
  • 黒い布 → 可視光をほとんど吸収

この性質は素材や表面構造にも影響されます。光沢面(ピアノの塗装など)は鏡のような反射を起こし、マット面(マット紙や無光沢塗装など)は拡散反射によって柔らかく見えます。

1.3. 人間の目と脳

光が物体で反射され、私たちの目に届くと、網膜にある 錐体細胞杆体細胞が反応します。

  • 錐体細胞(3種類)
    • L錐体(長波長、赤系)
    • M錐体(中波長、緑系)
    • S錐体(短波長、青系)
  • 杆体細胞 → 明暗認識(色の認識はほぼなし)

これらの細胞が受け取った情報は視神経を通じて脳に送られ、脳が「色」として認識します。この3種類の錐体細胞の信号が脳で統合されることで、多様な色を知覚できるのです。

2. 光・物体・視覚の関係性

色は光源のスペクトル × 物体の反射特性 × 人間の視覚特性の掛け算で決まります。 どれか一つが変わるだけで、色の見え方も変わります。

    例:
  • 光源が変わる(太陽光→LED照明) → 色味が変化
  • 物体の塗料や顔料が変わる → 反射する波長が変化
  • 視覚的条件(周辺色の影響、色覚の多様性、疲れ目など) → 認識色が変わる

3. 光源による色の違い

3.1 光源による色の違い

同じ物体でも、光源が変わると色の見え方は変化します。

  • 昼間の太陽光:自然でバランスの取れた光。
  • 白熱灯:赤みが強調され、暖かい色味に見える。
  • 蛍光灯:青や緑が強く見えることがある。

この現象はメタメリズム(条件等色)と呼ばれ、印刷・塗装の現場では重要な課題となります。

3.2 色が変わって見える要因

現場で色を扱う人にとって、色の変化は品質やデザインの問題につながります。主な要因は以下の通りです。

  1. 照明条件の違い
  2. 背景色や周囲の色の影響
  3. 観察者の色覚の個人差
  4. 観察距離や観察範囲
  5. 素材の質感や表面処理

例えば、色評価の現場では、昼光・蛍光灯・LEDといった複数の照明環境で確認することが推奨されます。

4. 物体と色の見え方

4.1 反射と吸収

物体は特定の波長を吸収し、残りを反射します。その反射光が私たちの目に届くことで色を感じます。

例:

  • 緑の葉 → 緑の光を反射、赤と青を吸収。(実際の緑の葉は赤も反射しています)
  • 青い車 → 青の波長を反射、他を吸収。

 

4.2 表面の質感と色

表面がツヤありかマットかで色の見え方も変わります。光沢面は反射が強く、鮮やかに見えます。マット面は拡散反射が多く、落ち着いた印象を与えます。

5. 色が見える仕組みに関するよくある質問

Q1. 色はどのようにして見えるのですか?
色は、光源のスペクトル(波長の組み合わせ)、物体の反射・吸収特性、そして人間の視覚の3つの要素が組み合わさって見えます。光が物体に当たると特定の波長が反射され、その光が目に入り、脳が「色」として認識します。

Q2. 光が変わると色が違って見えるのはなぜですか?
光源によって含まれる波長の分布(スペクトル)が異なるためです。 例えば、昼光は波長が均等に含まれますが、蛍光灯やLEDは特定の波長が強く、他が弱い場合があります。このため、同じ物体でも照明条件によって色が変わって見えます(メタメリズム現象)。

Q3. 人によって色の見え方が違うことはありますか?
あります。色覚には個人差があり、**色覚の多様性**の一部の人は特定の波長の認識が弱い場合があります。また、年齢や疲労、周囲の光環境によっても色の感じ方が変わります。

Q4. 物体そのものに色があるのですか?
厳密には、物体そのものに色はありません。物体は光を反射・吸収・透過する性質を持っており、その反射した光の波長によって色が決まります。 例えば赤いリンゴは赤の波長を反射し、それ以外を吸収しています。

Q5. 色を正確に管理するにはどうすればいいですか?
肉眼だけでは色の判断が主観的になりやすいため、分光測色計色差計などの測定機器を使うのが効果的です。 また、観察条件を標準化(例:D65/10度視野、D50/2度視野など)することで環境による色の見え方の差を最小限にできます。

Q6. なぜ印刷や塗装では色の測定が必要なのですか?
製品の色が設計通りか、ロット間でブレがないかを客観的に確認するためです。特にブランドカラーや特殊色は、微妙な差でも顧客の印象や製品価値に影響します。

まとめ

色が見える仕組みは光源・物体・人間の視覚という3つの要素が揃って初めて成立します。 現場での色管理では、この3要素を理解し、測定機器や標準化された照明環境を活用することが、品質維持と効率化の鍵になります。色を正しく理解することは、単に美しさのためだけでなく、製品価値やブランドイメージの保持にもつながります。